より深刻な、それでいて見過ごされている些細なこと

 

 

大人のメンタルヘルスに関わっていると、より深刻で、それでいて見過ごされていることがあると気づきます。

 

それは、先進諸国での死因が心臓発作やガンという、自律神経系や免疫系の失調状態から訪れる慢性的な病気であることに象徴されます。

 

つまり、症状はサイレントで副交感神経が過剰に働いて自己組織を侵食していくような病気、

 

あるいは交感神経系が失調状態を起こすパニックまでいかないような慢性の心臓への負担がもたらす病気が

 

何十年もの間蓄積したように症状として表面化する、いわゆるメタボリック・シンドロームを背景とした

 

病気で死ぬ人が多いということです。

 

風邪をひきやすかったり、熱を出しやすかったりしたが、大きな問題は何も起きないで、

 

数十年後にメタボリック・シンドロームという診断を受けました。

 

最初に感じた「胸が痛い」、「目が覚める、眠れない」といった問題を放置していて、より深刻なことが長年の間に起きます。

 

一時的に失調状態だったものをそのまま長い間にわたって維持する、もちこたえる頑丈さをもっている人は、

 

身体症状になるまでに時間がかかるということです。

 

 

 

糖尿病や高脂血症、高血圧といった症状、あるいはガンもそうですが、それまではサイレントではあっても、

 

長い目で見直してみれば、ストレスを維持してきた生活習慣病であることが多く、

 

心理的なことと無関係ではない、抑制的な過剰適応が引き起こしている心身症だということです。

 

 

 

神経が強い人で厄介なのは、自律神経系が免疫系、さらには内分泌系と密接に関連している状態なので、

 

サイレントな免疫障害やホルモンの障害も含めて、細胞レベルから組織の障害が長期的に引き起こされる可能性があるということです。

 

 

 

閉ざされた円環構造が作り出される危険性は、至るところにあります。

 

心身が丈夫な人であればあるほど、病の循環はサイレントなのです。

 

その意味では、兆候がある方が幸いです。

 

 

 

病気を大切にしましょう。

 

そして、閉ざされた円環のなかで、風邪をひきやすい、アレルギー、太り気味といった慢性症状に至る前に兆候に気がつくことが、

 

大人として生きるために必要な生存感覚であることがわかります。

 

慢性疾患の多くは死に至る病です。

 

ですから、その症状が不可避な状態で発覚する前に、さまざまな朝貢に目を向けていることが、

 

私たちに求められています。

 

 

 

 引用文献 

 

妙木浩之(2010) 大人のための精神分析入門  PHP新書